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2020.0202,対象となる日

2020.0202 対象となる特別な日にちなんで、ヒトの時間学について調べてみました。
時間と生物の関係について九州大学時代から勉強し続けているもののひとつです。昔から睡眠学会に所属しており、睡眠と時間について今も学習し続けています。
20年前に哺乳類の時間遺伝子が次々と発見されて、私ども生物の全ての細胞に時計を持っていることが分子レベルでわかってきました。
2017年ノーベル生理学・医学賞は時計遺伝子の発見に与えられました。
体内時計は2つ知られています。1つは「主時計」で、脳の視交叉上核に存在します。もう一つは「末梢時計」で、脳時計と言われる大脳皮質・海馬などと狭義の末梢時計と言われる肝臓・腎臓・副腎・骨格筋などに存在します。
体内時計のうち、「主時計」の影響をうけるのが、体温リズム・活動リズム・睡眠覚醒リズム・自律神経リズムです。「末梢時計」の影響をうけるのが、ホルモン分泌リズム・エネルギー代謝リズム・筋骨代謝リズム・腸内細菌リズムです。
同じ遺伝子でも、臓器ごとに独自の時間が時を刻んでおり、各臓器間を同調させる因子により統合したのを体内時間と呼んでいます。各臓器の時計がネットワークとして上手く同調していることが、健康的なリズムと考えられています。

「主時計」は光刺激に影響されます。私どもの体内時計は1日が24時間より長く24.18時間なので、朝の光刺激があると体内時計は短くなり1日が24時間周期となっているのは有名です。夜遅くに光刺激があり朝の光刺激が弱いと体内時計が遅くなり夜型化を起こします。朝の光刺激は朝方リズムにしますが、夜の光刺激(スマホの光など)は夜型リズムにします。

「末梢時計」は、食事、運動、ストレス、カフェインなどに影響されます。特に食事は、末梢時計の時間を変化させますが、「主時計」は影響を受けません。

加齢により、一般的に睡眠時間が短くなり、レム睡眠もノンレム睡眠も短くなります。これは、「主時計」の感受性の低下や網膜の光応答性の低下と関連があると言われます。加齢により朝方になる傾向も時計遺伝子の発現リズムは変わらないものの、加齢による血清成分が体内時計を早めて朝方傾向になると言われます。睡眠障害の多くは、遺伝的な要因よりも、シフトワークや不規則な食生活や夜更かしや精神的ストレスなどの環境的な要因によって発生すると考えられており、食品の機能性や摂取時間を利用した睡眠改善の研究が進んでいます。

また、時間栄養学や時間運動学から生活習慣病を診ることが盛んになってきました。インスリン機能が昼から夜にかけて低下し、また解糖系、TCAサイクル、アミノ酸代謝も夜にかけて低下するため、夕方に耐糖能低下が起こる一因になっています。そのため夕食時に血糖抑制作用のある食品や飲料を摂取することが糖尿病予防に効果的であると言われます。また夕方以降の炭水化物摂取量を抑えて、1日の摂取エネルギー量を1日の前半に多くとることが糖尿病予防に大切です。更に、朝食後のインスリン分泌は食物の代謝時計を早めますが、夜食のインスリン分泌は代謝時計を遅らせますので、夜食はメタボリックシンドロームになりやすくなります。
骨代謝に関わるホルモン分泌や作用の時間研究では、夜に良質のタンパク質やカルシウムを含む食品や飲料を摂取することが骨粗鬆症に効果的と言われます。

食事摂取の時間・時刻は重要です。結局、夕食や夜食のカロリー摂取量が多いと、同じカロリーでも朝昼に比べて太りやすくメタボになりやすいことになります。朝食を食べない事は肥満になりやすいことが知られていますが、朝食は糖の補給や糖新生の原料であるアミノ酸補給に効果的なタイミングです。また食事時刻で体内時計のひとつである代謝時計が調整されるため、夜食は体内時計を乱しメタボを起こしやすくなりますが、朝食は体内時計を正常化し健康にしてくれます。

運動が健康維持や増進に大切なことは明らかですが、運動と脂肪の時間研究では、朝の運動と比較して夕方の運動は、アドレナリンやノルアドレナリンなど脂肪分解ホルモンが増えることが知られていますので夕方の運動がダイエットに効果があるようです。運動と筋肉の研究では、夕方の筋力トレーニングの方が筋肥大に効果的と言われています。骨格筋の時計遺伝子や骨格筋の日内リズムが関係しているようです。

このように時間学は医学でも進んでおり、食事をする時刻や運動する時刻を再考するようになってきました。これからもより学習を続けて患者様の健康維持・増進に貢献したいと思います。